ガジェット 2022/04/23

【レポ】地震などの災害、停電で太陽電池は役に立つ?異なる天候でスマホを充電してみた


アイリスオーヤマのJTL-29とAnkerのPowerPort Solart Lite
 
地震や台風、水害などのときにはスマートフォンからの情報が命綱になることがありますが、停電が起きるとバッテリーで駆動するスマートフォンはいずれ使えなくなってしまいます。
 
そんなときに自力で発電する手段の1つが太陽電池(ソーラー充電器)です。ただ、太陽電池の発電量は日光の強さに依存するため、災害のときに役に立つかはそのときにならないとわからない部分があります。
 
今回は、アイリスオーヤマのJTL-29とのPowerPort Solar Liteを実際に購入し、さまざまな天候の日においてどの程度スマートフォンを充電できるか試してみました。

ラジオ、LEDライト、サイレン、モバイルバッテリー機能付きのJTL-29

最初に試したアイリスオーヤマのJTL-29は、防災に特化した機能がオールインワンになった製品です。
 
アイリスオーヤマのJTL-29
 
機能としては、
 

  • AM/FMラジオ
  • LEDライト
  • サイレン
  • モバイルバッテリー

 
が備わっています。
 
さらに、内蔵バッテリーは手回し方式と太陽電池で充電可能なため、停電時でもバッテリーを充電しながら利用できます。
 
JTL-29は記事執筆時点で5,000円程度で販売されています。

 

太陽電池はラジオやLEDライト用

このJTL-29の太陽電池を使ってスマートフォンが充電できるか実験してみました。
 
まずは内蔵モバイルバッテリーを空にするため、スマートフォンを充電します。
 
スマートフォンへの給電ができなくなった後、JTL-29にスマートフォンをつなげた状態で4月の快晴日に直射日光に当ててみました。
 
しかしながら、スマートフォンが充電状態になることはなく、JTL-29の太陽電池でスマートフォンを直接充電することは難しいようです
 
アイリスオーヤマ JTL-29の太陽電池でスマートフォンを充電
 
USB電圧電流チェッカーで確認したところ、5ボルトの電圧すら出ていません。
 
パッケージ裏の「充電時間の目安」には、86,000ルクスの太陽光で充電した場合、バッテリーをフル充電するのに約90時間から100時間かかると書かれています。
 
JTL-29の充電時間の目安
 
5ボルト0.9アンペアのUSB充電で約4時間から6時間と書かれていますので、単純に計算すると5ボルト換算で0.06アンペア、つまり0.3ワットほどしか電力を出力しないようです。
 
晴天昼間の太陽光が10万ルクスほどといわれていますので、快晴であってもJTL-29太陽電池の出力は弱く、スマートフォンを充電するほどの電力を出力しません。
 
また、内蔵バッテリーの容量は2,850mAhとiPhone13よりも小さく、これを充電するのに4日もかかるのではいざというときに役に立たないでしょう。
 
JTL-29の太陽電池は、実用的にはラジオやLEDライト用のようです。

 

手回し充電も直接のスマートフォン充電は難しい

JTL-29は太陽電池やUSB端子による充電のほかに、手回し充電が利用可能です。
 
バッテリーが空になっている状態で、手回しでの充電ができるか実験してみました。充電時間の目安によれば、手回し充電なら約4.5時間から5時間で内蔵バッテリーがフル充電になるとされており、意外と高出力のようです。
 
しかしながら、実際に手回し充電をおこなってもスマートフォンは充電状態にはなりませんでした
 

 
おそらく手回し充電器からスマートフォンの充電端子に直結されているのではなく、内蔵バッテリーを経由しているため、ある程度の時間回し続けて内蔵バッテリーを充電しないとスマートフォン側に出力されないのでしょう。
 
手回し充電は本体が小型なだけに回しやすいとはいえず、1分も回し続けると疲れて嫌になってしまいました。
 
こちらもスマートフォンを充電するためというよりは、ラジオやLEDライトを使うためのもののようです。

携帯可能な高出力太陽電池のAnker PowerPort Solar Lite

JTL-29の小さな太陽電池ではスマートフォンの充電が難しいことがわかったので、ある程度面積が大きい太陽電池を試すことにしました。
 
とはいえ、災害時に持ち出すことを考えるとあまりにも大きくて重いものを用意するのは現実的ではありません。
 
そこで今回は約350gと軽く、折りたためば28 x 16センチになる小型のAnker PowerPort Solar Liteを選択しました。
 
Anker PowerPort Solar LiteとiPhone XRの画像
 
XRと比べると上の写真のようなサイズ感です。
 
小型にもかかわらず出力は15ワット(USBの5ボルト換算で3アンペア)とスペック上は高出力であり、期待が持てます。
 
また、USB出力端子は2端子あり、同時に2台の機器を充電することも可能です。
 
PowerPort Solar Liteは記事執筆時点で、Anker Japan公式サイトで5,332円(税込)で販売されています。

 

晴天の昼間なら十分な出力が得られた

まずは4月の快晴の日の正午あたりに使ってみました。
 
実験に使ったのは XRと12.9インチ Pro(第3世代)です。
 

充電する機器 電圧 電流 電力
XR 5.0V 1.6A 8.0W
5.0V 1.4A 7.0W
XR + iPad Pro 4.4V/4.37V 1.12A/0.34A 6.4W

 
XRを1台あるいはiPad Proを1台のみ充電する場合は8ワット/7ワットと、十分な出力が出ました
 
バッテリー容量が大きいiPad Proはともかく、iPhone程度であれば実用的な時間で充電できそうです。
 
ただ、2つの出力端子にiPhone XRとiPad Proをつなげると電圧降下が発生し、出力電圧が5ボルトを切りました。
 
両機とも充電の継続はできていますが、安定して充電できるかはわかりません。
 
スペック通りの15ワット出力は日差しの強い夏でないと難しそうです。

 

快晴でも夕方近くには出力が低下

次に4月の快晴日の午後3時から4時頃に実験をおこないました。
 

充電する機器 電圧 電流 電力
XR 5.0V 1.0A 5.0W
iPad Pro 5.0V 0.4A 2.0W
XR + iPad Pro 5.0V 0A 0W
XR + iPhone XR 5.0V/5.0V 0.3A/0.3A 3.0W

 
同じ快晴の日でも正午とは異なる結果となっています。
 
XRは5ワットで充電できているものの、iPad Proをつなげたときは2ワットしか出力が得られません
 
また、 XRとiPad Proを同時につなげると、5ボルトの電圧は出ますが、電流が流れませんでした。
 
このときはたまたま家族のiPhone XRが使えたのでiPhone XRを2台つなげてみましたが、それぞれわずか0.3アンペアしか電流が流れず、充電には時間がかかりそうです。

 

薄晴れの日はさらに悪化

空にうっすらと雲がかかった日にはさらに出力が悪化しました。
 

充電する機器 電圧 電流 電力
XR 5.0V 1.0A 5.0W
iPad Pro 4.5V 1.0A 4.5W
iPhone XR + iPad Pro 5.0V 0A 0W

 
測定は4月の正午頃におこないましたが、iPhone XRで5ワット、iPad Proで4.5ワットしか出力されず、同時充電では電流が流れません。
 
よほど天気が良く日差しが強い昼間でないと2台同時充電は難しそうです。

 

曇りの日はiPhone 1台すら充電できない

さらに曇りの日や雨の日も実験をおこないましたが、残念ながら日が出ていないとiPhone XR 1台すら充電ができませんでした
 
同様に快晴の日であっても日陰や室内では充電できず、対応電池を使ったスマートフォンの充電はかなり条件が限られるといえるでしょう。

直射日光による電子機器への影響に注意

今回実験したPowerPort Solar Liteは日の光に当てないとスマートフォンの充電ができないことがわかったのですが、直射日光が電子機器に与える影響には注意してください
 
スマートフォンに搭載されたシステム・オン・チップ(SoC)などの半導体チップは高熱になると熱暴走を起こすほか、バッテリーとして搭載されるリチウムイオン電池は長時間高熱にさらされると劣化が促進されます
 
このため、太陽電池とともにスマートフォンを直射日光にさらし続けるのは推奨されません。太陽電池のなかにはモバイルバッテリーを内蔵しているものがありますが、このようなものも注意が必要といえるでしょう。
 
PowerPort Solar Liteは充電端子がある部分がポケットになっていて、ここにスマートフォンを入れると直射日光を避けられます。
 
Anker PowerPort Solar Liteのポケット
 
ただ、黒色の素材でできているためこのポケットの中も温度上昇することは避けられないでしょう。
 
高価なスマートフォンを直接つなげて充電するよりは、安価なモバイルバッテリーを太陽電池で充電し、その後モバイルバッテリーでスマートフォンを充電したほうが良いかもしれません。

停電時に太陽電池だけに頼るのは危険

今回の実験により、太陽電池でスマートフォンを充電するのは不可能ではないことがわかりました。条件さえ良ければ持ち運びが容易なサイズと重さの太陽電池でも、そこそこ高速に充電ができそうです。
 
ただ、小さすぎる太陽電池では快晴でも充電ができませんし、曇りになると災害用に適した小型の太陽電池では充電ができなくなります
 
今回は春に実験をおこないましたが、おそらく冬にはさらに条件が厳しくなるでしょう。直射日光にさらさなくてはいけないため、スマートフォンを長時間高温状態にするリスクにも注意してください。
 
筆者は、太陽電池は最後の手段として考えるのが適当だと思いました。停電への備えには大容量のモバイルバッテリーを複数用意し、空になったものから太陽電池で充電していくのが現実的だと思います。
 
太陽電池さえあれば停電が起きても大丈夫とは考えず、しっかり備えるようにしましょう。

 
 
Source: アイリスプラザ, Anker Japan
(ハウザー)

iPhone Mania

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